ピアノを弾けば弾くほど、難しいなと思う。
一般的に鍵盤は50g前後らしい。
つまり、50gの重力をかければ、音が出るということか。
実際には、
強く弾きたかったり、弱く弾きたかったり、
浅く、深く、優しく、鋭く、など、
さまざまな弾き方をするので、
常に50gの強さで弾く訳でなないと思う。
しかも、そういう弾き方をする理由は、
そうしたいからという訳ではなくて、
喜び、怒り、悲しみ、憤り、孤独、幸せなど、
表現したい感情や状況、風景などがあるから、
そうしているのである。
しかも、歌のように、そのまま肉体から発するもので表現できるのではなく、
指先という、心と直接つながっていない、間接的な手段を使って、表現しなければならない。
あたかも、指先や鍵盤に、心や魂があるように。
さらに、88個の鍵盤が、常に正しい調子に揃っている訳でもないし(いつも事前に調律がされているとも限らない)、
鍵盤から直接、音が出ているのではなく、鍵盤に与えた力が、非常に機械的な作りのなかで、弦を打って、音が出ている。
練習していると、
10本の指が、均等な力を持っている訳ではないこともわかるし、
右手、左手も、だいぶ違う。
そして、そもそも、
ふだん練習している、自分の楽器で本番を迎えることは、ほとんどない。
それでも、必ず迎えなければならないのだ。
毎回毎回、違うピアノを弾くのだ。
一生かけても、到達できるか分からない高みに向かっていくのが芸術。
こんなことを書いている暇があったら、練習しろ、ということなのだ。