あと2週間に迫った「共生する音楽 〜 SYMBIOTIC MUSIC」。
つい先日、メディア向けに記者会見を行いましたが、どのような公演なのか、イメージしてもらうことの難しさを感じました。
みなさんの中にも「気になる公演だけど、一体どういう中身なの?」という方も多いかと思います。
今日は少し長くなりますが、公演の解説と、こめている想いを、記したいと思います。
きっかけはコロナ
僕・重松壮一郎は、プロ活動を始めて17年間、ずっと即興演奏に取り組んできました。
それは、即興演奏が「いま」「ここ」でリアルタイムに生まれる音楽で、
それは一瞬一瞬をリアルタイムに生きる私たちと同じであり、
その生まれる音は、いま聴いてくれている「あなた」がいてこそ生まれるものであり、
だからこそ「その音」は、私とあなたをつなげるものであることだと、
ずっと感じ続けているからです。
さらに、新型コロナウィルスの到来は、その想いをいっそう強くしました。
昨年の春、初めてのパンデミックで、世界中の人が自宅での自粛生活を余儀なくなくされました。
学校も休み、仕事もなくなったり、リモートになったり、それがいつ終わるのかまったく分からない。
先行きの見えない世界で、誰もが一日一日、一瞬一瞬を大切に生きるしかなかった。
そしてそれは、楽譜も下書きもなく、一瞬一瞬を音にしていく即興演奏とまったく同じでした。
いまこそ、みんなに音を届けたい。
いま生まれた即興の音が、いまを共に生きる私たちをつなげ、
寄り添いあって、支え合って生きる助けになればと思いました。
音で表現してきたことを、言語化する
即興演奏は、とても分かりにくい、難解なものだと思われがちです。
音楽に詳しい人でもハードルを感じるのだから、一般の人には興味の対象外かもしれない。
それでも僕は、即興演奏こそ、生きることそのもので、いまを生きる人に届けたいと思い、続けてきました。
とはいえ、言葉のない音楽です。
少しでもハードルを感じず、先入観なく音の中にすっと入ってもらうために、目の前のお客さんを言葉(MC)でナビゲートしてから演奏し始めることも多々あります。
「ただただリラックスしてください」「頭を空っぽにして、波紋のように広がる音の世界に浸ってください」
そう話してから弾き始めたりします。
それでも、最高に集中した状態で、最初の一音を弾くためには、
本当は、ステージに立ったら、何も話さず、まっすぐピアノに向かいたい訳です。
そこで今回は、そのナビゲート役を「語り」に委ねることを思いつきました。
僕が、言葉のない音楽で表現してきたこと、演奏しながら感じている感覚、どんな風に一緒に音の世界に入ってほしいか、それを言語化し、「語り」という形で、物語のように、音楽と共に進行していくステージを思いつきました。
僕が信頼する詩人、言語造形家である稲尾教彦さんに声をかけ、このアイディアと想いを伝え、音楽劇として、脚本を書いてもらいました。
6つのシーンで進行する物語
物語はプロローグから始まり、6つのシーンで構成されます。
僕も「ピアニスト」という一人の登場人物としてそのシーンに立ちます。
その6つのシーンには、上記に書いたような僕がこれまで感じ考えてきたことと、
コロナで感じたこと、そして未来への希望が詰まっています。
コロナ禍で、私たちは支え合うことの大切さを感じましたが、分断も生まれました。
物語の中では、異なる個人である私たちが、ぶつかり合いながらも、その壁を乗り越えようともがく姿もあります。
その壁や、分断を乗り越えた先の世界を、描きたいと思っています。
今回、僕と稲尾さんの他に、共演者が3人います。
ダンサー青柳ひづる(東京)、ギタリスト樫原秀彦(熊本)、そして娘つむぎです。
語り以外はすべて即興です。
僕が表現したいことをともに即興で実現できる仲間に声をかけました。
その3人も物語の「登場人物」となります。
そして舞台美術は、オランダから、フラワーアーティスト・ヒームストラ舞が駆けつけてくれます。
語りの稲尾教彦さんは北海道ですから、みんなこのために遠くから来てくれます。
もちろんみんなPCR検査を行い、お客様が安心してお越しいただけるように備えます。
メイン公演とプレ公演について
6人のメンバー全員でつくるのが佐世保で開催するメイン公演、
その2日前に、僕と稲尾さんだけでつくるのが諫早で開催するプレ公演「シンプル・バージョン」です。
このプレ公演はライブ配信も行います。
メイン公演に参加できない遠方の方や、参加する予定だけれども、事前に予習したい方にご覧いただけるようにいたします。
-> ライブ配信の情報はこちら
文化庁補助金AFFについて
今回の舞台は、文化庁の「コロナ禍を乗り越えるための文化芸術活動の充実支援事業」である「ARTS for the future!」(通称: AFF)の助成を受けて開催します。
全員の交通費、出演料だけでなく、会場費、照明、音響、広告宣伝費、ビデオ撮影、ライブ配信、その他スタッフ謝礼など、総額でものすごい経費になります。
このコロナ禍のチケット収入だけで賄える金額ではないと判断し、補助金申請を行い、無事に採択されました。
採択される可能性は50%ほどと言われていましたので、無事に採択されて本当にほっとしました。
もちろん、国の補助金だから、みなさんの税金です。
それを使わせてもらえることに感謝するとともに、
だからこそ一人でも多くの方にお越しいただきたいと考えております。
最後に
この長文でも、想いは収まり切りませんが、さらにこれを1枚のフライヤーやWebページに収めて、魅力ある公演だと思ってもらうのは、至難の業です。
ここまで読んでくださったみなさんに、心から感謝申し上げます。
「このコロナ禍で、私たちが寄り添い、つながりあい、支え合いながら、ともに生きること」
簡単にいえば、それが一番のテーマです。
コロナ禍で先行きの見えない世の中ですが、この舞台作品が少しでも人々が生きる力となることを願い、創り上げます。
みなさまのお越しをお待ちしております。
-> 詳しい公演情報はこちら